書籍「不登校そうだんしつ」出版

あべが思うこと

階段

1歩ずつ、1段ずつ昇るしかないと思うんです。

上の方ばかりを見てしまって、
どうすれば、あそこまで行けるのか、
なんとか早く、あそこまで行ける方法はないか、
どうして他の人々は、すでにあそこにいるんだ、

などと考えるよりも、
まずは、目の前の1歩、目の前の1段。

右足を乗せて、次は左足を乗せて、その繰り返ししかないと思います。


「1段抜かし」で駆け上がる人を見て、うらやましくなるかもしれません。
だけど、やっぱり、とるべき行動は足元の1歩、次の1段なんです。

オトナは時々、2~3歩分の「1歩」を求めてしまいがちです、
3段くらいは一気に昇ってくれないと、なんて求めがちです、
年令や経験という“足の長さ”が、そうさせるのでしょう。

だけどそれは大変です、
自分の足の長さに合った1歩で昇っていくことが大事ですし、確実です。


ボクは犬を飼っています。
散歩のとき、階段を踊るように駆け上がります、ボクは走らなければ追いつけないくらい。

でも仔犬の頃は、なかなか階段を昇れませんでした。
はじめは階段の前で身動きがとれずに固まっていました。
そんなときに、上から引っ張ったところで昇れるものではないんですね。いくら強く引っ張っても、首輪がしめつけられるだけで、それでも身動きはとれません。
その後も、1段を昇るのに随分と時間がかかって、たまにオシリを押してあげたりして。そしていつしか昇れるようになりました、4つの足で懸命に1段ずつ昇れるようになりました。

でも、ある日、昇った階段をUターンして、今度は降りようかと思ったところ、
こわがって全く動きませんでした。降りられなかったのです。
ハッとしました、昇ることができたのだから、降りられるだろうと勝手に思っていたのですが、違いました。その日からは、降りる練習をしましたね、今度は前に回って落ちてもイイように手をかざしながら。

ウチの犬に関しては、階段を初めて自分で昇ったときよりも、初めて自分で降りたときの方が強く印象に残っていますし、嬉しかったです。


やはり階段は1歩ずつ1段ずつだと思います。
上ばかり見ても、ゴールばかり見ようとしても、足は進みません。
上ばかり見て、足元に目を向けないでいると、かえって1段が重く感じてしまうかもしれません。
だからまずは足元の右足、そして左足。
まず1段、そして次は次の1段。

だけど、足元ばかり見ていてはいけません。
たまに上を向いた方がイイでしょうね、あっちへ進もうという道しるべになりますから。
たまに下を見てもイイかもしれません、実はこんなに昇ってきたんだと感じることもあるでしょうから。

たまに駆け上がってみてもイイんじゃないですか。
逆に休んだりしてもイイんじゃないですか。
どちらにしても、次に目指すことは、次の1歩、次の1段です。

「10段昇る方法を教えて下さい」と聞かれたとします。
答えは「ではまず1段昇りましょう」ですよね。


さて、昇ってみましょうか。

では、いったん上を見ましょう。
はい、そして足元を意識しましょう。
足に力を入れて、目指すは次の“1段”です。

自分にとっての“1段”は、なんでしょうか。
見えない“ゴール”を目指すよりも、次の“1段”を目指しませんか。

全ては、“1段”ずつの積み重ねですから。

階段というのは、1段ずつ足を運べば、前に進める、上にあがれる、ゴールへ行ける、
そういう構造になっているのですから。